これからの季節の変わり様に歩調合せるため、部屋の模様替えアイテムを物色しに、見事な秋空の元、街へ出た。そんな身も心も澄み渡るような日の午後13:30頃、一人のおじいさんに呼び止められた。


・・・・話を聞くと、友達に電話をかけたいのだが財布を忘れたため、100円貸してくれないかということらしい。身なりは、薄汚れたスウェト上下にテープで補強したメガネに真っ黒の顔…

うむ。見るからに文無し家なしのおじいさんだ。ただ、この一瞬戸惑ってしまうような状況下で解を出すのはそれほど難しい作業ではなかった。

・・・それは、二週間ほど前にテレビで見たのだが、各被験者がおばあさんからタクシー代を貸してくれないかといわれた時、どういう行動をするかという検証番組で、そんな人間の本性が垣間見えた瞬間の様子が電波に乗って、我が家のテレビ画面に映し出された瞬間、自分の答えを出していた。


あのときの答えが頭をよぎった瞬間、僕はおじいさんに100円を差し出していた。そのおじいさんが本当にホームレスかどうかなんて分からないし、信じて良いのかも分からない。でも、困った人がいたら、助けたいと思うのが人間の人格であって欲しいという想いがあり、たった100円だが充分にそれを託した。
しかし次の瞬間、おじいさんが言った言葉に電話なんてしないことを確信した。情けない、みじめだと。

なぜだろう。良いことをしたはずなのに妙に胸くそ悪い。ただ、あの時通り過ぎてたら、もっと気分が悪くなってたにちがない。

一つ言えることはあの時、お互いがすっきりするような行動を現時点で持っていないが、世の中の不条理なことに対して、もっと目で見て心で感じて、頭でもっと考えるべきだと強く思った。